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LastupDate:2003/12/10
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チャイナウォール
コラム、『チャイナウォール』−中国人の法意識−
第五回 著作権
(2003年12月10日執筆)
1.中国人の権利意識(5)―著作権
今回紹介するのは、著作権が誰に帰属するかが争われた事件である。企業が情報媒体を通じて企業のキャッチフレーズを募集することは良く見られることである。このとき入選者は、如何なる権利を取得したと感じるのだろうか。
事例4 王定芳が上海東方商廈のキャッチフレーズ募集に入選した作品の著作権の帰属を求めた訴え
(「王定芳訴上海東方商廈有限公司徴集入選的広告語著作権帰属糾紛案」最高人民法院中国応用法学研究所編『人民法院案例選(1992年−1996年合訂本)(下)』人民法院出版社、1997年、1385−1391頁)
1 事件の概要
1992年7月3日、上海東方商廈有限公司(被告、Y)は、『毎週広播電視』紙上にキャッチフレーズ募集の記事を掲載した。応募作については、入選1等賞1名、2,000元、2等賞2名、500元などとされていた。王定芳(原告、X)は、これに応募し、その作品「世界風采、東方情韵――上海東方商廈」が2等賞に入選した。同年9月4日にYは、『解放日報』紙にキャッチフレーズ選考結果を発表し、作者Xの「世界風采東方情――上海東方商廈」をキャッチフレーズとすることを決定し、Yは、同時に入賞作品の版権はYに帰属すると記載した。1993年1月10日にXは、授賞式に出席し、賞金500元を得た。その後、Xは、キャッチフレーズがラジオ、テレビ、雑誌などで使用されていることから、1993年7月に人民法院にキャッチフレーズの著作権がXに帰属し、Yの勝手な使用禁止と謝罪、およびYが半年間に得た営業収入が3億元あることを考慮し、Xに1万元の経済損失を支払うよう求める訴えを提起した。 法院は、以下のとおり認定した。
Yのキャッチフレーズ募集は、創作委託契約といえ、ただ、採用された作品についての著作権帰属についての約定がない。Xの入賞作品の著作権はXにあるといえ、その使用権はYにあるといえる。Yは選考結果を発表の中で、入賞作品の版権はYに帰属するとしたが、これは無効である。また、XがYに1万元の経済損失を支払うよう要求したことには理由がない。しかし、総じて、この創作委託契約は無効であるが、この点についてYは民事責任を負わなければならない。
以上から、法院は、調停を行い、XY双方は以下のとおりの合意に達した。
キャッチフレーズ「世界風采東方情」の著作権は、Xに帰属する。
Yは、キャッチフレーズ「世界風采東方情」の専用使用権を有し、使用期限は5年とする。
Yは、Xに5,000元を支払う。
1993年12月29日に法院は、調停書を作成し、双方当事者が署名し、合意内容は履行された。
2 検討課題
本件に関して、法的には以下の問題がある。第一に、(1)キャッチフレーズが著作権法で保護される作品といえるか否か、第二に、(2)キャッチフレーズ募集は如何なる法律行為といえるか、第三に、(3)Yが募集採用したキャッチフレーズの版権がYに帰属するといえる法的根拠は何か、第四に、(4)Yに当該キャッチフレーズの専用使用権があるといえるか否か、ということになる。 しかし、中国人の権利意識を理解するという観点からは、以下の諸点が気にかかる。第一に、(1)企業のキャッチフレーズ募集広告に応募し、これが入選し、企業の広告に使われたことに対して著作権の帰属を主張するという権利意識はどこから来るのか、第二に、(2)Yが半年間に得た営業収入が3億元あることを考慮し、Xに1万元の経済損失を支払うよう求めるというような意識が、中国人の一般的な考え方なのだろうかという点である。日本人の権利意識や法意識と比較してなかなか理解できない。
本稿でも疑問詞型の課題指摘で叙述を留めておく。さらに数件の事例を検討した後に、この疑問に対して若干の解答を試みたい。
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