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(2006年2月8日執筆)
浙江省工商行政管理局が、2005年12月にソニーのデジカメ「サイバーショット」6機種について品質、機能検査の基準を満たさない不合格品として販売中止を命じた。 日本メーカーには不安が広がっているという。中国には検査基準が複数あり、その主導権争いの中で、世界的なブランド「ソニー」が犠牲になったとの見方すらある(朝日新聞 2005年12月17日)。 この見方は、果たして正確であろうか。2005年には食品、化粧品などでも多国籍企業のブランドが、品質が劣るとの批判にさらされている。電子製品でもフィリップスの携帯電話が不良品であったとの報道もある。そうであるならば、上記の検査基準に関する主導権争いの犠牲との見方は、あたらないであろう。 問題の本質には、(1)多国籍企業に対する警戒心、および(2)中国企業のブランド育成を推進したいという政策的背景があるような気がする。 多国籍企業に対する警戒心があるのではないかと考えるのは、経済参考報(2006年1月5日)の記者、韓丹による署名記事「多国籍企業ブランドが品質不良の危機にさらされている」(跨国品牌遭遇劣質危機)に、以下のような内容があるからである。 韓は、多国籍企業の製品の品質危機は、なぜもたらされたのかとの問いかけに、多くの中国人が次のような分析をしているという。すなわち、第一に、中国の消費者は、著名な多国籍企業の製品を盲目的に崇拝してきた。しかし、製品に品質不良が見られたとき、いつも中国の消費者は不平等な扱いを受けてきたという(中国人消費者は外国の著名ブランドの品質不良を甘受させられてきたということか。)。第二に、多国籍企業のグローバル化の進展が著しく速く、グローバル市場における生産工程および管理水準を掌握しきれていない。ソニーは、製品不良を指摘されたときに、生産現場の従業員が業務を怠った内部管理の不良であると言い逃れしたという。第三に、中国は、市場における監督メカニズムが欠如しており、製品不良が生じても多国籍企業は常に運搬途上の問題であると言い逃れすることを許している。 さらに、韓は、多国籍企業は、そのブランド力をもって中国の消費者を蔑視してきたという。日本企業は、一流の製品は欧米に輸出し、二流の製品は国内で販売し、三流の製品を中国など発展途上国に輸出するという。正にこのような発言振りは、企業帝国主義の心情ではないのかとさえ指摘する。 日本企業にしてみれば、誤解も甚だしいといえようが、このような発言振りは、中国人の消費者らの意識として、そのまま受け取ることはできないし、そのままの意識として受け取ることは日本企業の方向性を誤らせることにもなるだろう。 記事の背景には、中国企業の育成、自主ブランドの開発を促し、中国人消費者に自国製品の購入を促す政策があると考えられる。長期的には、自主ブランドを開発するのが中国家電メーカーの道であるからである。
次回の更新は2月22日(水)の予定です。
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