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LastupDate:2006/3/22
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第62回 打擦辺球(エッジボール)

(2006年3月22日執筆)

   ある日本企業に詳しい弁護士が、「日本企業は、欧米に比べてルールを守る。」という。この意味の中には、欧米は弁護士に依頼すれば途中の経過を確認することはなく、結果のみを重視するのに対し、日本企業の場合は中国の政府機関とどのような交渉を、どのような理由でしているのかなど経過についても知りたがるということが含まれる。そこで、日本企業は、欧米企業のように結果重視型で一括した契約を結ぶよりも、個別の問題で不明点がある場合にリーガル・オピニオンを求めてくることが多いそうである。
   このような性質の違いからか、紛争が生じたときの解決法についても日本企業と欧米企業の違いが際立つ。日本企業は、紛争解決に際しては、最後の最後までリーガル・アクションをとらない。ところが、欧米企業は違う。
   紛争解決のプロセスは、まず(1)宴会による和解に始まり、(2)法務部担当者による交渉、(3)弁護士による交渉、そして最後に(4)訴訟・仲裁などの法的処理と進む。日本企業の場合、裁判までいたることは少ない。日本では、リーガル・アクションは決裂を意味する。日本企業は、担当者も良く代わるので、交渉が長引いているときに担当者が代わると、裁判などの法的処理によりたとえ僅かに債権回収できるとしても不良債権処理したほうが面倒でないと考えるケースもよく見受けられ、法的処理に進むことを止めることが多い。
   中国の知財侵害状況はひどい。中国では権利侵害がますます重大になりつつある。この理由には、中国では信義則・誠実の基盤ができていないということが指摘される。これには、単に商行為だけでなく、社会的・政治的な問題もある。
   ピンポンで打擦辺球(エッジ・ボールを打つ)というのがある。テーブルの端を僅かにこするだけなので、ピンポンボールが跳ねないが、インと判断される。中国企業は、法や契約にかかわる問題で、擦辺球を打つことが多い。法や契約に規定がないからやっていいという判断を中国企業はする。一方、日本企業は法や契約に規定がないことを行うことにはためらいがある。
   そこで、中国で10年以上の合弁事業などの経験がある日本企業の社長は、中国の法は「白い紙に黒い字が書いてあるだけだろう。」という。中国では先進資本主義国と同様の法整備が進んでいる。しかし、法の普及、順法教育にはまだ遅れがある。中央政府の意識は間違いなく進歩的であるが、地方ではそうでもない。打擦辺球も地方保護主義のなせる業であろうか。元深圳中級人民法院知財法廷の裁判官(現在は弁護士)は、「中国における知財侵害は、今後5〜10年内には、良くなるのではないか。ただし、産業別、地域別に差はあるかもしれない。」という。

次回の更新は4月12日(水)の予定です。

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