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LastupDate:2006/4/26
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第64回 知財保護の意識

(2006年4月26日執筆)

   2006年4月に浙江省義烏で「義烏文化産業博覧会」が開催された。国内のバイヤーがおよそ3万5,000人、国外のバイヤーが3,000人余も参加する盛大な博覧会であった。
   義烏は、上海から列車で約5時間のところに位置する。20万人もの販売業者が毎日2,000トンの商品を購入する力のある中国最大の卸センターである。販売面積は260万平方メートルあり、営業拠点が5.8万箇所、集積する業種は43業種、40万品目以上が取り扱われている。2005年の年間取引額は388.9億元であった(経済日報 2006年4月14日)。
   はじめに義烏を有名にしたのは、中国のニセモノ商品センターであるということであろうか。
   例えば、以前にはGilletteの剃刀が5枚1箱のものが10箱で65セント。正規の値段で北京では9.6ドルである。Marlboroのタバコが、1カートン16ドルのものが、やはり1.45ドルで売られていたという(CHINA’S PIRATES Business Week June 5,2000 at20-25)。
   この義烏が、変わり始めた。義烏は、“ニセモノ・劣悪商品の打撃”および“知的財産権保護”の重視する姿勢を打ち出した。義烏文化産業博覧会では、会場に知的財産権保護弁公室を設置し、会場入口のロビーには知的財産所有権者のためのコンサルティングや侵害申立のサービス・カウンターを設けた。
   商務部、国家工商行政管理総局、国家版権局、国家知的財産権局が共同で制定した「展会知識産権保護弁法」(展示会知的財産権保護弁法)が3月1日から施行されている。この弁法の立法趣旨は、(1)展示会に出展した商品に知的侵害がないように管理し、紛争を未然に防止しようとするものである。世界におけるニセモノ製品の取引高は世界貿易総額の6%にのぼる。国際展覧会では、外国に出展した中国企業の知的財産権も侵害されているという。知的侵害、ニセモノ商品の市場流通に関しては、世界的にも著名ブランドになりつつある中国企業からも懸念の声が出始めている。
   4月11日には米中政府レベルの通商問題にかかわる協議を行う米中合同商業貿易委員会がワシントンで開催された。この委員会の席上、中国政府は、知的財産権の保護に向けた行動計画を策定し、コンピューター・ソフトの海賊版などの生産・流通の取り締まりを強化する方針を表明したという(日本経済新聞 2006年4月12日)。この委員会開催より前に国家知的財産権保護作業グループ弁公室は、関係部門と『2006年における中国の知的財産権保護に関する行動計画』を制定している(この行動計画について詳しくは、日本貿易振興機構北京センター知的財産室のホームページ http://www.jetro-pkip.org/teji/swbact20060328.htmを参照)。
   さて、知財保護の意識が高まりつつあるとはいえ、知財侵害がなくなり、ニセモノ商品の氾濫した状態がなくなるかといえるかについての回答は悩ましいものがある。品質がある程度確保されれば、ニセモノでも安いもののほうがいい、ニセモノと知りつつ敢えてこれを買うという文化がある。この限りにおいては、ニセモノを生産することは犯罪であるという意識も希薄である。ニセモノが姿を消すまでには、なお数年の時間がかかるであろうか。

次回の更新は5月10日(水)の予定です。

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