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LastupDate:2006/6/7
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第67回 蔓延る商業賄賂撲滅のための立法

(2006年6月7日)

   中国公安部は、2005年に全国の公安機関が摘発した経済犯罪は6万件を超え、1年間で5万人を逮捕したと発表した(日本経済新聞 2006年5月24日)。事件は、金融や証券分野で大型化しており、回収した被害金額は143億元に達したという。
   この摘発された経済犯罪の概念に含まれるのか否かは分からないが、商業賄賂が蔓延し、この具体的な対策として商業賄賂撲滅のための立法が急ぎ検討されている。
   現在は、反不正競争法(不正競争防止法)8条で贈収賄行為を処分すると規定し、この規定に基づき「商業賄賂行為の禁止に関する暫定規定」(1996年11月15日公布、同日施行。全12条)で多少具体的な禁止行為を定めているが、罰則規定は不十分である。また、ここでの商業賄賂は、事業者が商行為を行う際に相手側単位または個人に賄賂を贈る行為とされ、公務員に対する贈賄は必ずしもこの対象にはなっていない。
   今日問題となっている商業賄賂とは、企業が事業遂行上において不法な便宜供与を得るために、公務員に対して金品を贈る行為をいう。このような商業賄賂が多い分野は、建設工事、土地の払い下げ、医薬品の販売、政府買い付け、資源開発、出版事業、銀行の信用貸付、証券、保険、通信、電気事業などであるという。政府の許認可権限が多い分野に集中しているといえそうである。賄賂を受けた公務員は、不法な事業・商売を故意に放縦し、取り締まることをせず、犯罪を認容しているという事実が増加し、金額も関係者数も分野も広範になり、市場秩序が乱れ、市民に切実な危害を加えるようになっている。
   そこで、市政公共機関の所有権改革および特許経営制度改革が必要であるという。すなわち、多くの業種・分野で行政独占が存在し、自由競争の状態が確立されていないことも問題なのであろう。
   取締りは最高人民検察院に委ねられているが、既存の法の枠組みだけでは取締りが充分ではない。より具体的な取締りをするために、(1)中国商業部は、@地域、部門、業種をまたがった商業詐欺事件の防止体制、A商業賄賂収受者に対する責任追及規則を定め、(2)中国銀行監督委員会は、商業賄賂監督規則を定め、(3)建設部は、建設市場・不動産市場の信用確保のために@建設工事入札制度を定め、A信用確保のための基準(誠信体系標準)を定めた。
   中国共産党中央には、中央治理商業賄賂領導小組(商業賄賂撲滅指導グループ)が組織され、今、商業賄賂事件を専門的に調査し、対策を検討している(人民日報 2006年5月25日)。全国人民代表大会常務委員会法制工作委員会は、商業賄賂に関する取締り強化のために商業賄賂犯罪を規定する刑法改正案を示した。現在、全人代常務委員会で改正についての審議が行われている(法制日報 2006年5月18日)。
   中国進出外資企業も地元の政府関係機関にさまざまな付け届けなどをしないと、便宜供与が受けられないという話もしばしば聞く。いかなる反商業賄賂法が立法されるのか注目される。日本においても不正競争防止法18条により外国公務員への贈賄が処罰の対象になる。中国の公務員から賄賂をもとめる素振りがあっても、拒否できる体制を整えなければならない。

次回の更新は6月21日(水)の予定です。

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