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LastupDate:2006/7/12
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第70回 カルフール従業員の収賄事件
――商業収賄をなくすマネジメント方法

(2006年7月26日)

   カルフール中国(上海に本部を置く。カルフールは中国語で「家楽福」と表記される。)は、2006年7月に中国全国75のスーパーでマネジメントの改善を図るという発表をした(China Daily, 2006.7.18)。
   マネジメントの改善とは、各地のスーパーの中国人マネージャーが、商品の買付に際して、売り手から商業賄賂を受け取っていたことを認め、このような収賄行為をなくすことをいう。
   カルフールに納品することが認められた食品業者などにとっては、自社の製品をアピールする上でこの上なく有利なことであるといえる。そこで、これら多くの食品業者はこぞってカルフールの買付担当者と接触し、「なんとか、うちの商品を納品させてください。」と頼み込むわけであるが、この際に商品の品質や価格だけが勝負の判断基準になるのではない。実態として買付担当者に如何に取入るか、そしてこの取入る手段としてどれだけ賄賂を包むことができるかということが競われることがしばしばある。
   買付担当者は、商業道徳観念が麻痺するようである。または、そもそもこのような道徳観念は存在しないという評価もある。如何に出世の道があっても、買付担当者の地位を他の者に譲らず、この地位にとどまったほうが徳であるともいわれている。
   カルフールは、このような慣行ともいえる中国における商売のあり方をある程度まで黙認してきたようである。しかし、最近の中国で商業賄賂に関する取り締まり強化キャンペーンをうけて、カルフールとしても商業慣行として黙認、座視できなくなった(商業賄賂撲滅に関する立法問題については、本コラムNo.67「蔓延る商業賄賂撲滅のための立法」を参照)。
   では、どのような手段をもって収賄をなくすことができるのか。台湾の「好又多スーパー」の買付担当マネージャー黄静は、次のように自社の経験・手法を述べる(「防毒与刮毒并挙」『中外管理』2005年第9期)。
   「商業賄賂をなくすには、以下の4つのことが大変に重要です(以下、要約)。
   第一に、会計監査部門の設置と強化です。財務、法務などの関係メンバーから構成し、定期的に購入、営業担当者の業務監査をし、注文・支払などの手続が会社の規定に合致しているかをチェックします。そして、会計監査部門のマネージャーが、この監査結果を支店長に報告します。このような部門を設けることが、商業賄賂をなくす上では、最も有効なようです。
   第二に、中堅幹部の待遇をよくすることです。各職位の規範を定め、賃金査定を標準化し、その透明度を高めることです。こうして各要員の積極性と潜在能力を発揮させることです。企業自身は、企業文化を確立しなければならないでしょう。こうして企業に対する帰属意識を強め、長期的な発展計画と発展の願望を高めることで、短期的な利益追求の意識をなくさせることが肝要です。
   第三に、営業と買付の分離です。カルフールは、「営業と買付の統合」方式をとっていますが、もう一つの方式として「営業と買付の分離」方式があります。この2つの方式には、それぞれにメリットとデメリットがあります。市場のスピードと応変の才を考慮したときには、「営業と買付の統合」のほうが優れているでしょうが、管理を規律するということでは「営業と買付の分離」のうほうが優れているでしょう。しかし、最近では多くの小売業が「営業と買付の分離」方式を採用するようになっています。同じ人が商品の発掘のための営業を行い、同時に買付もするということであると、どうしても腐敗現象が起こるものです。
   第四に、一罰百戒とすることです。我々は、2003年に大規模な会計監査を実施し、およそ1割の買付担当者を解雇し、収賄額が著しく多かったものについては人民法院に起訴しました。贈賄をしていた業者とは取引を停止したものもあります。当時は大きな衝撃が業界で走りましたが、今ではこの決断が支持されています。」


北京市白石橋のカルフール

次回の更新は8月9日(水)の予定です。

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