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LastupDate:2006/9/27
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第74回 顧客権と個人情報保護法

(2006年9月27日)

   国務院が、個人情報保護法の立法手続を開始した。まだ、具体的な草案が出来上がっているわけではないが、起草担当者が決められ、草案の検討が始められたようである。
   個人情報保護法の制定を求める声が、中国国内で急速に増えている。
   北京市在住の申氏は、自動車の損害保険が満期になる前月から200件以上の自動車損害保険勧誘の電話が自宅にかかってきたという(http://cq.qq.com/a/20060913/000368.htm)
   インターネット上で探したい人の氏名を入力すれば、僅かの費用で、相手の固定電話番号、携帯電話番号、自宅および勤務先の住所、婚姻関係、犯罪記録、銀行借入記録、個人財産記録などの個人情報が即座に得られるというサービスもあるという。最近、9000万人のこのような個人情報が1元で入手できるという報道があったという。
   康君は、今年、大学を受験したが、成績が芳しくなかった。このとき、自宅に知らない男から電話がかかってきて、康君が大学受験したこととその成績をなぜか知っていた。この男は、「もしお金を出すことができれば、良い大学に入学させられる方法がありますよ。」というのであった(http://sjzdaily.com.cn/sjzrb/2006-08/15/content_821783.htm)
   憲法においてプライバシー権(隠私権)の保護規定はあるが、これは人身の自由や住宅の不可侵であったり、通信の自由や通信の秘密の不可侵、人格の尊重ということである。これは、私生活をみだりに公開されない権利であり(中国大百科全書“法学”626頁)、公権力や私人を他人の生活にみだりに入り込ませないというもので、自由権的、消極的なものである。
   この権利をもっと広げ、自己の情報をコントロールする権利を確保する必要性があると認識されるようになってきている。
   「顧客権」という言葉も見られる。明確な概念はないというが、顧客の利益を考慮した新しい財産権として考えようということである(覃有土=王継遠「論顧客権」中国政法大学民商経済法学院のウェブサイト(http://www.ccelaws.com/int/artpage/9/art_6982.htm)
   この顧客の概念には、(1)商人とその消費者との関係、すなわち当該商人にとっての顧客だけでなく、(2)商人が取引先との正当な方法により入手した顧客リスト、(3)商人が営業活動の中で各種方法によって情報を入手した顧客、が含まれる。これまでは、これら顧客の情報は、不正競争防止法(反不正当競争法)などで商業秘密として間接的に保護されていたに過ぎなかった。しかし、これでは不十分であり、商業秘密権や知的所有権と並列して独立した新たな無形財産権として顧客権というものを設ける必要性があるとの議論が出てきている。
   外資企業も中国におけるこのような動向に注意しておく必要がある。例えば、日立(中国)は、個人情報の保護に関して、同社の中国語ホーム・ページ上に同社の「個人情報管理条例」を公開している。かかる準備が、何れの企業にも求められる。

次回の更新は10月11日(水)の予定です。

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