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LastupDate:2006/11/8
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第77回 先富起来人と平民との所得格差の拡大

(2006年11月8日)

   11月1日から5日まで、短期間ではあるが日本学術振興会の科研費による「日本企業の対中貿易・投資に伴う紛争リスクのマネジメントに関する研究」のために上海を訪問した。
   日本の大学に4年間留学した経験があり、現在上海で就職活動中の地方出身の中国人陳君(仮称)にあった。彼は、現在、アパートの1室を8つの個室に分けたところに月750元の家賃で住んでいるという。キッチンはなく、共同のシャワーがあるだけで、テレビのアンテナもないところ、他の7人はレストランやクラブの従業員でいずれも地方出身の者らしい。
   先富起来人(先に豊になった者)と平民との所得格差がますます拡大している。この格差を拡大させている最大の要因は、不動産の所有者であるか否かということである。地方出身者が間借りしているアパートの所有者は、まだ20代後半の夫婦であるというが、この夫婦はいくつものマンションをもち、これを上記のようなかたちで転貸しているという。
   陳君の出身農村でも同様のことが起こっているという。彼の村では、都市化が進みつつあるが、早くから移転をし、政府が移転のために支給したマンションを手にした農民が、マンションの転貸で資金を得て、この資金を元手にまたマンションを購入し、これをさらに転貸してと、所得が膨らんでいっているという。彼の村では、夫婦にマンション1部屋、およびこの子供にも1人につき1室のマンション(何れも120u程度)が与えられるので、使用しなくてすむマンションを転貸できるのだという。この夫婦は、こうして預金を増やし、子供はイギリスに留学させたそうである。
   経済発展著しい上海であるが、都市内部でも所得格差は拡大しているようだ。この所得格差の拡大が、同じ都市において住宅空間を分割する現象を生んでいるという(「評論:正視“空間定型”的貧富差距」瞭望http://news.sina.com.cn/o/2006-11-06/115710426093s.shtml)。すなわち高級住宅街とそうでない地区との分割である。高級住宅街に住むことができる先富起来人は、学校、医療、治安環境などの公共サービス面でも多くの便宜が与えられることになる。それ相応のコストがかかるが、先富起来人にしてみればさほどの負担ではない。
   所得格差の拡大、さらには最近の住宅空間の分割現象は、和諧社会(調和のとれた社会)を歪めることにはならないのであろうか。政治や社会の安定を確保したく和諧社会を目指す中央政府にとっての重要課題となるようである。
   陳君は、“空”には上れないだろうが、少しでも空に近い“山”に登りたいといっていた。


上海福州路。中心市街区に残されている建物は取り壊されようとしている。

次回の更新は11月22日(水)の予定です。

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