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(2006年12月13日)
中国共産党第16期中央委員会第6回全体会議(2006年10月)は、「社会主義社会の調和の構築に関する若干の重大な問題の決定」(関于構建社会主義和諧社会若干重大問題的決定)をした。この決定の中で9大目標が提議されたが、その第一が民主法制の確立であり、第二が収入分配の公平についてであった。 社会の公平を確保する上で経済法の使命が重要になってきている。そこで、中国政法大学民商経済法学院は、16期6中全会閉幕の直後(10月28日)に「当面の社会公平の追求と経済法の使命」と題するシンポジウムを開催している(http://www.ccelaws.com/mjlt/default.asp)。 この会議の席上、現在の中国における収入分配の現状として、以下のようなデータが示されている。 不公平な現状には、(1)都市と農村、(2)地区間、(3)業種間の格差もあり、この格差が拡大傾向である。都市と農村住民の所得格差は6:1、地区間では例えば最も収入の多い上海と最も収入の少ない貴州では、4.25:1、業種間では同じく証券業と農業の格差が7.52:1である。ジニ係数も高まっており、試算によると0.45だが、0.5と国際的な警戒水準に達しているという見方をする学者もいる。 所得の二極分化が進んでいる。美菱集団の調査では、中国の富裕層(100万ドル以上の不動産を除く財産=現金を保有する。)は32万人にのぼる。これに対して、依然として貧困人口は3200万人もいる。さらに貧困人口には数えられないが、食および収入が十分であるとはいえない人口が5600万人いるといわれる。中産階級は、世帯年収が5.3万元から16万元の間であり、この人口は1億人、総人口の7%である。 所得格差の拡大に関しては、さまざまな給与外収入、その多くは灰色収入や違法所得であるが、これが大量に存在することである。中国の地下経済も相当に増加しているということである。地方政府による非税収入は財政収入の40%もある。これは「乱収費」と呼ばれ、中央政府によって認められた正当な法的根拠のある費用徴収とはみなされない地方政府による不法、勝手な費用徴収といえるものである。 所得格差拡大は、市場経済化の進展につれ、市民の智慧が活用できるようになり、この中でチャイニーズ・ドリームも生まれてきたことも大きな要因である。しかし、一方で農村人口の都市への移動が、戸籍移動の自由が認められないとか、農村人口が都市へ出稼ぎに来ても社会保障が受けられないとかいった制度上の問題で、都市住民と同じチャンスが与えられないために所得格差が増大したという要因も大きい。 所得格差の拡大、分配の不公平は、社会の調和(和諧社会)を乱す原因となる。これを修正するものとして、財税法、社会保障法、独占禁止法などの経済法の役割が重要となる。これら法の制定や改正が、社会の公平をもたらすもの、不均衡の是正に実務上の操作性をもたらすものとして重要視されてきている。新規立法、改正に関する議論、内容から、時の政権が今日の中国の課題に回答できているか、将来の経済発展を維持できるか否かの判断材料にもなる。
次回の更新は12月27日(水)の予定です。
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