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(2006年12月27日)
中国商務部は、2006年12月19日に「中華老字号」(中国老舗ブランド)授与式を行い、茅台、全聚徳、五糧液、同仁堂など430の企業に「中華老字号」(中国老舗ブランド)の称号を授与した(中国商務部http://www.mofcom.gov.cn/aarticle/a/200612/20061204085477.html )。 この老舗ブランドの中には、100年以上の歴史のあるものが約43%ある。しかし、老舗ブランドが、ニセモノの横行と市場経済化の波に押されている。 天津「狗不理」包子(パオツ)は、日本人にも馴染の深いブランドだろう。この「狗不理」が、全国に数千店舗存在するという。ところが真の分店は、僅か数店舗だけだという。Wangmaziは、1651年に設立され、かつて中国で最も著名な鋏を生産していたが、ニセモノが氾濫したことで2004年に倒産してしまった(China Daily 2006.12.20)。2004年にWangmaziが倒産したときには、同社のニセモノが、市場で500万個も見つかっている。これはWangmaziの生産量の3倍にあたる数であった。 2006年12月20日に北京市第二中級人民法院で「泥人張」の権利侵害をめぐる判決が下された。100年来の歴史を持つ天津「泥人張」の特許権者が、北京「泥人張」を相手取って、ニセモノ「泥人張」を製造販売しているとして、「泥人張」の名称の使用停止と損害賠償を求めていた事件である。判決は、北京「泥人張」の不正競争を認めたが、天津「泥人張」がこの事実を知りながら20年以上も何ら対策を講じていなかったとして、損害賠償請求を棄却した。 ニセモノの被害者は、外資企業にとどまらず、中国国内企業にも広がっているし、これは必ずしも直近のことではない。中国企業がブランドを意識し、この権利について敏感になってきたのは、最近のことであるといえる。 老舗ブランドの抱える問題は、市場経済化も進展の中で消費者・顧客の意識の変化によるものもある。今の若者は老舗ブランドよりも新しいブランドのほうを好む。包子よりもケンタッキーやピザハットのほうが好きだという。これは単に味覚的嗜好やモダンだというだけではない理由がある。心地よいサービス、クイック・サービスがうけている。一方、老舗ブランドは、老舗であるという驕りがあり、顧客に対するサービスを等閑にしているという批判がある。物不足の時代の生産者主義的な供給型経済から、消費者が主体である需要型経済への転換の意識がないといえそうだ。 商務部は、3年内に1,000の企業に「中華老字号」を与えたい計画である。中国の老舗ブランドを建て直し、老舗ブランドで国際ビジネス・対外輸出の商機を掴みたいようだが、知的所有権に対する意識をもたせるとともに、企業のマネジメントから指導する必要がある。
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