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LastupDate:2008/5/28
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第114回 四川大地震:
被災地の不動産に関する法律問題への対処

(2008年5月28日)

  2008年5月12日に発生した四川大地震から2週間が経つ。甚大な建築物における被害のなかでも学校の校舎が崩壊が多かったという。このために多くの学生が命を落とし、建築工事に対する責任問題が厳しく追及されている。学生に限らず、多くの人命および財産が失われている。
  まだ、救援活動の最中であり、二次災害の危険性や感染症予防にも力を入れなければならない段階である。
  こうしたなか、住宅・都市農村建設部は、住宅を失った方のためにすみやかに仮設住宅を建設し、被災者の臨時的な住宅を確保し、生活を保障するために2008年5月21日に「地震被災地区の仮設住宅建設技術指導規則(試行)」を発布した(建設工程教育網http://www.jianshe99.comより)。被災地の地理的な特性から、この規則においては、当該地区の地質、気候、文化、伝統および生活習慣などを考慮して仮設住宅を建設するとしている。
  今後の復興を考えた場合、被災住民の生活を保障するために、不動産(土地・建物)に関しては、今後どのような配慮や検討が必要になるのであろうか。
  市場経済化が進み、私的自治の原則や契約自由の原則が一般的になってきた中国であるが、不動産に関してはなお中国型社会主義市場経済の制度が根強く、四川大地震への対処として先進資本主義国のような対処では通用しないことがある。旧来の不動産に対する概念・制度と市場経済化の進展の中での新しい制度とを調和させて、被災者の生活保護という視点から救済措置をとる必要がある。
  この問題については、まだ具体的な政策は出されていないが、政府、銀行、債権者が共同で被災者の損害を負担すべきであるという意見が、各方面から表明されている(前掲、建設工程教育網)。
  さて、土地に関しては、中国ではすべてが国有地であり国から土地使用権を取得した権利者がこれを使用している。今回の地震で使用できなくなった土地や使用権利者がこの土地の使用の継続を希望しない場合には、国が使用権を買い戻す(または、使用権利者が国に対して買取請求権を発生させる)という手立てを講じることが考えられる。
  建物については、個人所有になっているものが少なくないであろうが、居住地を移転せざるを得ない被災者に対しては、国が補償金を支払うべきであるとの意見も出されている。
  学校の校舎の崩壊が多く、かつ被害の程度の大きかったのは、手抜き工事が原因であると指摘されている。国務院は、建設工事品質管理条例を公布しており、この条例に基づき施工管理する技術者についても「施工管理技師登録管理規定」(2006年4月1日施行)があり、公式に登録された施工管理技師が建物の施工管理を行うことになっている。建設業者の責任問題とともに、施工管理に関する制度が機能していなかったことも問題になりそうであるが、そうであればこの責任の帰属問題も検討されなければならないであろう。
  四川大地震に対しては、中国であるが故にできる被災者の対する生活保護政策、解決策というものがあるのではないかと考える。


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