コラムに関する感想
お問い合わせ
LastupDate:2008/6/11
トップチャイナウォール
コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第115回 四川大地震
―医療衛生システムの再検討が必要に

(2008年6月11日)

  2008年3月の全国人民代表大会において、温家宝首相は、医療衛生のための政府支出を2007年比25%増の832億元にすると述べた。また、温首相は「中国政府は、医療衛生システムの改革を非常に重視している。人を基に、公共医療の公益性を堅持し、都市部や農村住民をカバーする医療保障システムの整備を加速し、公共衛生サービスシステムを完備させ、国の基本薬物制度と薬品供給保証システムを設立していく」と述べている。(北京週報 2008年4月15日)
  このとき、最も重要視される地区は、農村および辺境地域である。2007年に北京で中国衛生部とWHOの共催による「中国農村部衛生保健発展国際シンポジウム」が開催された。この会議の席上、衛生部は「農村及び辺境地域の衛生事業の発展を重視し、初歩的な衛生保健サービスネットを構築することや農村医療保障制度を整備すること、それに国際交流と協力を強化する。」と述べている(中国国際放送局(China Radio International.CRI.)http://japanese.cri.cn/151/2007/11/03/1@106573.htm)。
  しかし、四川大地震は、単に医療衛生支出を増額するだけでは、現在の中国の医療衛生体制が十分ではないことをいかにも明らかにし、対策の遅れを露呈することになったようだ。
  中国の急速な経済発展は、人々の生活、とりわけ都市住民の所得、生活水準を向上させ、生活スタイルも変容させた。しかし、この経済発展に取り残された内陸農村はどうであろうか。
  公衆衛生の遅れはいうまでもない。農村の青年が都市に出稼ぎに行くこともなお多く、農村部の実質的な高齢化も急速に進展している。こうした現状から高齢者の疾病が多くあり、これが慢性病化して増加している。さらに伝染病の発生があり、こうした問題は、都市部と比べて大きな進展が見られない。むしろ問題は顕在化しているということが言えるかもしれない。重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザおよびHIV/AIDSのような新興感染症は、医療衛生に対する切迫した脅威があることを示している。
  公共医療制度、健康保険制度の拡充などが求められるが、このような政府主導の医療衛生体制の構築だけではなく、民間の活力も取り込んだ官民協働の行動が必要である。この場合、民間の医療機関の認容、医療衛生産業の振興なども積極的に検討されなければならない。
  国際協力も重要なテーマである。東京大学医科学研究所は、中国科学院に属する微生物研究所と生物物理研究所それぞれに日中連携研究室を設置し、新興・再興感染症(エイズ、肝炎など)の先端的研究を行っている。中国は、高い肝炎ウイルスのキャリア率、急増している、新興・再興感染症のホット・ゾーンとなっています。日中連携は、HIV感染症、SARSや鳥インフルエンザの流行、新型インフルエンザ発生のおそれなどの感染症に対して、合理的な予防・治療法の開発および流行予測や公衆衛生学的施策の立案などに貢献し、さらに広範囲の病気について次世代ワクチンの開発研究を促進することを目的にしたものである。このような国際協力を有効なものにするために、中国政府には情報を秘匿せず、積極的に開示する姿勢も求められるだろう。


※サイトの記事の無断転用等を禁じます。


© Copyright 2002-2007 OBC-China Reserved.  
"chinavi.jp" "ちゃいなび" "チャイナビ" "中国ナビ"はOBC-Chinaの商標です。