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LastupDate:2008/7/23
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コラム『チャイナウォール』−中国人の法意識−

 第118回 カルフール社員による収賄事件―8名に実刑判決

(2008年7月23日)

  2007年7月に精肉供給業者から不法にリベートを取り、収賄罪に問われていたカルフールの社員8名の裁判の判決が2008年6月30日に北京市朝陽区人民法院で下され、被告8名に対して、1年から5年の実刑、および収賄したすべての金額30万元の没収が言い渡された(法制網http://www.legaldaily.com.cn/2007fycj/2008-07/01/content_890026.htmほか)。
  事件は、次のようなものであった。カルフール馬連道店の精肉課長の劉連傑およびその他店舗の精肉課長ら8名は、肉の買付数量、店舗内の陳列位置などについて決定権を有していることをいいことに、2006年6月から2007年7月にかけて北京資源亜太食品有限公司および北京華都肉鶏公司に「好処費」(リベート)18万元を要求し、これを収受した。遡れば2005年5月から北京華都肉鶏公司はリベートを要求され始めていたという。
  2007年7月に精肉供給業者からの密告で収賄が発覚し、8名が逮捕された。2007年8月26日にカルフールは8名を懲戒解雇した。カルフール中国(本社:上海市)は、2006年7月に各地のスーパーの中国人マネージャーが、商品の買付に際して、売り手から商業賄賂を受け取っていたことを認め、このような収賄行為をなくすという発表をしている(China Daily, 2006.7.18)。
  この発表のほとぼりも覚めやらぬうちに、今回の事件が発生したことになる。
  そもそもカルフールの経営方針として、納品業者に対して入場料(admission fee)を会社として要求するということがあった。また、中国における商取引においても、不当とは認識されながらも買付け担当者に対して、業者がリベートを支払うという慣行ともいえる制度が存在していた。しかし、最近の中国で商業賄賂に関する取り締まり強化キャンペーンを受けて、カルフールとしても買付け担当者が納品業者から個人的にリベートを取ることを禁じる措置を強くとることにしたのであった。しかし、商業賄賂禁止措置の実行効果は、必ずしもなかったということになる。なぜなのだろうか。
  北京資源亜太食品有限公司および北京華都肉鶏公司は、ともに納品先の買付担当者がリベートを要求することは「この業界の暗黙裡の規則であり、渡さなければならないものと考えていたし、その額も多くはない。」という趣旨のことを述べている。リベートは、毎月の取引額(納品額)の1%であったという。ただし、これ以外にも数回にわたり1〜4万元を支払うということもあったということである。
  劉ほか8名の精肉買付け担当課長は、リベートの収受について架空の口座を開設し、ここに振り込ませるということをしていた。カルフールの経営者は、もし密告がなければこのような収賄事件は内部調査では把握できないだろうという。
  中国には階級がないというが、そうであろうか。弱者の権利を守る「公正」「公平」という観念が弱いような気がするし、これを保護する法整備が不十分であるということもいえそうである。あるいは、中国人は商品を販売するときに数倍の値段を吹っかけてくるのが当たり前であって、言い値で買うことなどもなく、利に聡く技巧に長けているということがあるとすれば、リベートなども中国人の「商計」とでもいうものであるのであろうか。


次回は8月13日(水)の更新予定です。

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